先代犬のめりが亡くなって、4か月ほど経った頃のことです。
めりがいなくなってから元気のなかった私を見かねて、旦那が気晴らしにモールへ連れ出してくれました。
特に何かを買う目的があったわけでもなく、いろいろなお店をぶらぶら。
その中のひとつに、ペットショップがありました。
犬を飼おうと思って入ったわけではありません。
ただ、そこにいたんです。
ガラスの向こうに、
生後3か月のビーグルの赤ちゃんが。
「やっぱビーグル好きだわぁ」
旦那とそんな話をしながら見ていたら、店員さんが、
「抱っこしてみますか?」
と声をかけてくれました。
もちろん抱っこします。
ビーグルですから(笑)。
小さな身体から感じた「生きてる」
ワンちゃんを抱っこすると、不思議な感覚があります。
小さな身体が温かくて。
腕の中で動いていて。
当たり前のことなんだけど、
「ああ、生きてる」
って思うんです。
めりを亡くしてまだ4か月。
久しぶりに腕の中で感じる、小さな命でした。
私はちょっと感動していたんだと思います。
ところが。
当のビーグルの赤ちゃんは、そんな私の感傷など知ったこっちゃありません。
モゾモゾ。
モゾモゾ。
私の身体をよじ登り――
肩まで到達。
そして、
ガジガジガジガジ。
「…………何してんの?」
私の髪についていたバレッタをかじっていました。
いや。
こっちは今、
命のぬくもりに感動してたんですけど。
返して、私の感動(笑)。

そんな様子を見ていた旦那が、突然言いました。
「うちに来るか?」
本気だったのか。
冗談だったのか。
その場の思いつきだったのか。
今となっては、そんなことはどうでもいい。
なぜなら私は、
「いいの? ありがと~!」
と即答したからです。
はい。
決定(笑)。
こうして、バレッタをガジガジしていた生後3か月のビーグルが、我が家にやってくることになりました。
🐶 この子がその後どんな子になったのかは、
「はじめまして、めろです。」で紹介しています。
「めり」の“め”をもらって、「めろ」
名前は「めろ」にしました。
先代犬のめり。
もともとの名前は、
「恵が有る」と書いて「メアリ」ちゃん。
それがいつの間にか、「めり」と呼ぶようになっていました。
だから新しい子の名前にも、めりの「め」を残したかった。
候補は、
「めら」
「める」
「めれ」
「めろ」
その中から選んだのが、
「めろ」でした。
めりの代わりではありません。
めりは、めり。
めろは、めろ。
でも最初の一文字だけ、めりからもらいました。
こうして名前も決まり、契約を済ませました。
ただ、その日に一緒に帰ったわけではありません。
健康診断やワクチン、トリミングなどをペットショップで済ませてもらうため、お迎えまでは約1週間。
そして、とうとうその日がやってきました。
雪の降るクリスマスイヴ
めろを迎えに行ったのは、
クリスマスイヴ。
しかも、その日は雪が降っていました。
……なんて書くと、ものすごくロマンチックですね。
雪のクリスマスイヴ。
新しい家族。
小さなビーグル。
映画だったら、ここで素敵な音楽でも流れそうです。
でも、現実のめろは――
ダンボール箱の中。
そして、とても不安そう。

そりゃそうだよね。
生後3か月。
突然知らない人に連れられて、知らない場所へ行くんだから。
私たちにとっては、
「今日からめろが家族になる!」
という嬉しい日。
でも、めろからしたら、
「私、どこに連れて行かれるの?」
だったのかもしれません。
ゲージの隅っこで、小さくなっていためろ
家に着いて、まずは部屋に慣れてもらおうと、めろにはゲージの中に入ってもらいました。
すると、
あのペットショップで私の肩までよじ登り、バレッタをガジガジしていた子が――
ゲージの隅っこで小さくなって震えていました。

「あれ?」
バレッタを襲撃していた勇者はどこへ行った(笑)。
でも、その姿を見ているうちに、いろいろ考えました。
この子は産まれてまだ3か月。
産まれて間もなく親や兄弟と離れて、たくさんの人の手を渡って、知らない場所へ来たのかもしれない。
そして今、また知らない家に来て、ひとりで震えている。
そのとき私は思いました。
この子には、お母さんが必要なんじゃないか。
犬のお母さんって、子犬とくっついて寝るよね?
だったら――
私もやればいい。
今考えると、なかなかの強硬手段です(笑)。
「今日から私がお母さんです!」
ゲージからめろを出しました。
そして、小さな身体が潰れない程度にギュッと抱いて、そのまま一緒に寝ることにしました。
当然、
めろ、暴れる。
逃げようとする。
たぶん、めろの心の声は、
「離せーーー!!」
だったでしょう。
対する私は、
「今日から私がお母さんです!!」
めろ、
「聞いてない!!」
……みたいな(笑)。
もちろん、本当は私だって不安でした。
先代犬のめりとは、しっかりとした絆がありました。
姉御肌だっためりは、「子ども」というより私のパートナーのような存在でした。
果たして、この小さな子とも、いつかあんなふうに絆を作れるんだろうか。
嫌がっている子を抱いて寝るなんて、これでいいんだろうか。
正しいことなのかも分かりませんでした。
ただ、ひとつだけ強く思っていました。
「絶対守るから。」
それだけでした。
暴れていためろも、そのうち疲れたのか大人しくなって、眠ってしまいました。
そして――
暴れたのは、
その日だけ。
翌日から普通に、私の枕元でくっついて寝るようになりました。

……順応、早っ(笑)。
数日後、ビビリ犬は脱走を企てる
こうして少しずつ家に慣れていっためろ。
ゲージの隅で震えていたので、
「この子、かなり怖がりなのかな」
なんて心配していたのですが――
数日経つと、
ゲージを飛び越えて外へ出ようとするようになりました。
ちょっと待て。
数日前まで隅っこで震えてたよね?
どうした、その成長。
しかも飛び越えようとして、お腹に傷まで作ってしまう始末。
どうやら、
「怖い場所」
から、
「ここから出て遊びたい場所」
には昇格したらしい(笑)。
結局ゲージは外しました。
でも、めろには別の「自分の場所」ができました。
キャリーケースです。
大きな音がしたとき。
叱られたとき。
めろはキャリーケースへ逃げ込みました。
そこへ入れば安心。
誰にも邪魔されない。
めろなりに、
「ここは私の場所」
を見つけたんでしょうね。

ビビリでも、ごはんは別です
ところで。
知らない家に来て、不安で震えていためろ。
「怖くてごはんも食べられなかったのでは?」
と思うかもしれません。
ご安心ください。
普通に食べました。
だってビーグルですから(笑)。
怖いです。
不安です。
知らない家です。
でも、
それとごはんは別です。
このあたりは最初から、立派なビーグルでした。
そして旦那との関係も、非常に分かりやすいものでした。
そもそも、
「うちに来るか?」
と言った張本人。
その後の役職は――
おやつ係。
めろにとって旦那は、
「食べ物をくれる人」
として、早々に重要人物へ昇格しました(笑)。
ビーグルとの関係構築に食べ物は強い。
いつから家族になったんだろう
あの最初の夜。
私は、
「この子のお母さんになってあげる」
と思いました。
でも。
めろが本当に私を「お母さん」だと思っていたのかは、分かりません。
そして、
「この日から絆ができました」
という特別な日も、思い出せません。
何日だったのか。
何か月だったのか。
もしかしたら何年も経ってからだったのかもしれません。
ただ、あるとき気づきました。
めろは、いつも私を目で追っている。
私が動けば、見る。
部屋の中を移動すれば、目で追う。
何かしていて、ふとめろを見ると、こっちを見ている。
そのとき初めて思いました。
「めろにとって、私は特別なんだ。」
お母さんだったのか。
家族だったのか。
相棒だったのか。
それとも、
「この人についていれば、とりあえずごはんは出てくる」
だったのか(笑)。
それは、めろに聞いてみないと分かりません。
でも、たぶんそれでよかったんです。
めりとは、めりとの絆があった。
めろとは、めろとの絆ができた。
最初からあったわけじゃない。
「絆を作らなくちゃ」と頑張って作ったものでもない。
一緒に寝て。
ごはんを食べて。
遊んで。
叱って。
逃げ込んで。
また出てきて。
そんな毎日を繰り返しているうちに、
気づいたら、家族になっていました。
そして、その全部の始まりは――
モールの中のペットショップ。
私が小さな命を腕に抱いて、
「ああ、生きてる」
と感動している、そのすぐ横で。
生後3か月のビーグルが、
私のバレッタをガジガジしていたことでした。
……めろ。
せめて最初の出会いくらい、
もうちょっと感動的にできなかったのか(笑)。
でもまあ。
そんなところも含めて、めろだったんだよね。 🐶


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